ロビーよ、見たか!
世界一を決めるカップ戦を、膝十字靭帯損傷のおかげで、ピッチではなくどこか遠いところからしか見ることのできないロビーよ、今日の試合を見たか。
ロビーがここまで浦和を引っ張ってきてくれたことは誰もが知っている。ロビーの怪我が横浜FC戦一回で起こったのではなく、それまでの蓄積疲労によって生じたことだということも。誰よりも眼一杯のプレーを見せてくれ、華麗な技術の上に、勝ちたいという魂が宿っているロビーのプレイスタイルは、浦和のサポーターに世界の超一流ということを、これでもかと見せつけてくれた。
「ウーベ・バイン以来の超・助っ人だぜ、浦和の歴史を刻むかもしれないぞ」札幌の我が家で、TV画面に映る未知の選手を見てぼくは家内にそう洩らしたものだった。彼は、本当に浦和の歴史を世界に刻んでしまった。
今日の試合はそのロビーがいない。正直、心配で心配でならなかった。でも十分な休養が得られた。Jという名の重圧からも逃れられた。いわば、白紙。これなら闘えるんじゃないか。その思いが現実となった。三度目のセパハンに勝つ浦和の強さを、今日はTV画面でまざまざと見てしまった。
ボランチに入った阿部は水を得た魚のようだった。啓太の落ち着きは世界を圧倒しているように見えた。若い細貝、鬱憤を溜めていた相馬、過激で感情を表に出し切った闘莉王。
本当にこんな選手層で闘えるのか、と思えるスタメン。
ベンチには小野も山田も。
それがこれだけの試合をしてくれた。
王者、浦和!
セパハン・ボナチッチ監督『今夜のチームはセパハンではなく病気のチームだった。みんなが健康ならまったく違うチームだったが…。いいところを見せられなかった』いつもそうなのだが、この監督の試合後コメントほど醜いものはない。3試合、浦和に勝てなかった監督である。クロアチア人であるのに、なぜかマリッチとは対照的なところで仕事をしている。
そんなチームに負けるわけにはゆかない。今年で去る選手たちを沢山抱えて、浦和は、Jで破れ、天皇杯で破れ、その代わり、世界のチームの中で妙に際立ってきている。
試合を終え、裏番組に眼をやる。スカパーで、広島-京都の入替戦の録画を流していた。試合の最後の部分を見てしまった。かつてレッズがいたシーンがそこにあった。J2落ちも、J1昇格も。それらを経験して世界に挑んだチームは浦和以外になかったんだな、と思うと、ちょっと涙腺が熱くなった。
レッズサポしかないチーム、と記者会見でオジェクは酷評されたそうだ。レッズサポのいるチームなんて、世界のどこのチームに作れるんだよ、とぼくは、ひそかにほくそ笑んでみせた。雪降る札幌の一角で。