寿退職して辞めて行った部下の花嫁姿は、とても綺麗だった。風邪でスピーチの声が嗄れてしまったことを申し訳なく思った。でも毅然と背筋を伸ばして、新郎と二人で歩く部下の姿が晴れがましく、そうした姿にじんと感動している自分に対し、けっこう歳を取ったものだなと、感じているもう一人の自分がいた。
旭川の往復は久々のJR。よい天気に恵まれ、雪原に光が跳ねる光景をじっと見詰めていた熱っぽい往路と、文庫本を開いて頭を上げることがなかった夜の帰路。いそいそと出かけて、いそいそと帰ってきた旭川。微熱の向こうで、部下の花嫁姿も、旭川の雪景色も、いろいろなものが幻想的に記憶にとどまりそうだ。