ジャズバー、ヴィレッジゲイトにて
大画面にて優勝特番を見ながら最後の残りメンバーだけでバーボンを静かに飲んだ。白壁のサインを指でなぞる。福田の古いほうのサインがあってNO.9と書かれているのを指でなぞり、ぼくは仲間に話す。
<大原で滅多にサインなぞしてくれない福田からついにサインをもらって握手をしてもらったことがある。ぼくは明日頑張って下さいと言ったのだが、その翌日、レッズはグランパスに5-0で負けた>
雨の中耐えた改装前の駒場スタンド。指でなぞりながらまた涙が溢れそうにになる。
望月のサインもあるよ、とマスターが言う。レッズがやってきたばかりの古い選手たちのサインが12年というときを越えてここにあって、それを指でなぞることができる。洞窟の壁画のようにぼくらはそれを見つめながら深く酔いつぶれることができる。しみじみと、とにかくこれが浦和の夜……優勝の夜なのだった。