こどもの怪我
昔のこどもは毎日のように足の膝っ小僧やくるぶしを切ったりすりむいたりして、赤チンでてらてらと光っていたように思うのだが、昨日ひさしぶりにうちの息子が、怪我をして帰ってきた。公園の岩飛び遊具のようなところを飛びそこねて、両足にすり傷。血がいっぱい出たらしい。
泣いたか? と訊いたら、皆の前では泣かなかった。家に帰ってきたら泣いたのか? うん。
こどもは痛い思いをして血をいっぱい流した方がいい。痛みを感じずに血の流ればかりが映像的に氾濫している現代、血と痛みが双子の兄弟のように堅く結びついたものであることを人は知るべきであるような気がする。
親はこどもの怪我を極端に嫌うものなのかもしれないが、こどもはいつも怪我をしては、痛みを知り、危険を知り、暴力を知り、思いやりを知るのだと思っている。なんでもかんでも怪我を避けてゆく人生というのは、あとで大けがをする可能性のある育ち方であるということだ。
ぼくは大した怪我をしたことはないのだが、それも小さなすり傷を毎日のように膝っ小僧に作ってきた世代であるからなのかもしれない。