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『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー

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拳銃使いの娘

She Rldes Shotgun (2018)

ジョーダン・ハーパー

鈴木恵訳  ハヤカワポケミス

2019/1/19発行  ¥1,700


    アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)新人賞受賞作品。早川書房は海外作品の受賞作品を半年から一年くらいで日本語版にして出版してくれる稀有な版元である。中でもポケミスは早撃ちにかけては名の知れた叢書なので、ぼくは八割方は読んでいる。新たな作家に出会うことも多い。本書デビューとなったこのジョーダン・ハーパーみたいな活きのいい作家と。

    少女が犯罪者の父親と逃亡し逆転勝利を、目指すロード・ノヴェルである。のっけから彼等の殺害指令が全米に出される。超重警監房にいる犯罪グループのボスから発される。少女は、父親と同じ拳銃使いの眼をしている。海ではなく川のように青い眼を。

    作者はテレビドラマ作家だそうで、小説の展開もなるほどスピーディーで心地良い。ノワールで、クライムで、バイオレンスでありながら、熊のぬいぐるみを手放さない少女の成長物語でもある。

    巻末解説によると、インスピレーションを受けたのは『子連れ狼』『ペーパームーン』『レオン』作家としてはジェイムズ・エルロイコーマック・マッカーシークエンティン・タランティーノだそうだ。笑いたくなるほど納得。推して知るべし。

    犯罪に無縁の人はおよそ出てこない。はぼすべての人物が堅気ではない作品世界で、一番不似合いだったのが主人公の少女ポニーだ。もちろん主人公は彼女。拳銃使いの父親の隣、助手席でタフに育ってゆく彼女の変貌ぶりこそが、この作品のすべてを駆け抜ける魅力である。

     時に美しく、時に容赦のない文章が、アメリカ西部の荒野を縦横に切り取ってゆく。薄手の本ながら密度の詰まった重量級の傑作としてインパクトを与えてくれること間違いなし、請け合います。