洋上の訃報
室蘭から青森へ渡る洋上にて、真夜中、日が変わったばかりの時刻、父の訃報が携帯に飛び込んだ。
青森には6:20着。高速を飛ばし、父がセカンド・ライフを送ってきた旧炭鉱町の古びた家に着いたのが、昼前。およそ一年ぶりに見る父のなきがらはまた一層年老いて小さく見えた。幼い頃に恐れていた人のようにはとても見えない。
田舎には田舎の葬儀のしきたりがあるとはわかっているのだが、近所づきあいが密接なこの地方は様々な慣習や決め事に縛られているようで、要領のわからないことだらけながら、葬儀屋や協力者の方々と一日中打ち合わせを進める。
ひぐらしがかまびすしく鳴いている。森の木立の緑が深い。北海道とは少し違う東北の山村特有の風が旧家の開け放した縁側を吹き抜ける。夜遅くになって酒を呑む。日本酒を五合ほど呑んでしまったが、気が張っているせいか、全く酔った気がしない。
定年を迎えてからは、遠くの地に転居して、四半世紀の田舎暮らしを愉しんだ父を偲びつつ、宵が更けるに任せた。